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台湾エクセレンス特集-金鴻(Aropec)
公開日 2021-06-09

 

ソーシャルメディアが隆盛を極める現在、多くの人が習慣的にプラットフォーム上で生活の記録を付け、写真をアップロードしシェアするようになっています。脱工業化時代に生まれた世代の心は「大自然」を志向し、それが暮らしを楽しみ、人生の体験を高める上での一つの指標ともなっています。これまで、休日にはストレス解消のためにロードランニングやサイクリングなどのアクティビティに打ち込む人が多く見られていますが、ここ数年はウォーターアクティビティの人気も徐々に高まり、都市部で暮らす人々に新たな体験の選択肢がもたらされています。ウォータースポーツの発展は、海外ではすでに長い歴史があるものの、台湾はやや遅れを取っています。しかし意外にも、ウォータースポーツ分野で名を馳せる「Aropec」は、台湾のブランドなのです。現在、Aropecのダイビング・ウォータースポーツ製品は世界88の国・地域へと展開され、その販売網は欧米・日本メーカーが進出を果たしていない中東へも広がっています。

  
                                       

3度の事業転換 台湾に根を下ろし世界の舞台へ

金鴻股份有限公司(Aropec Sports Corp.)は、1963年に靴の受託製造メーカーとして起業し、60年近くにわたる歴史の中で、3度の事業転換を果たしてきました。最初の事業転換は1987年のことでした。この頃、台湾の株式市場は1万ポイントの大台に達し、多くの人が株取引で一夜にして大金持ちになろうという夢を抱き、本業が上の空となってしまっていました。しかし靴の受託製造は労働集約型の事業であるため、金鴻でも納期遵守率が悪化し、苦境に立たされました。同業他社の多くが東南アジアへの工場移設を進めていった当時、金鴻の魏敏聡総経理は逆に台湾に残る道を選択しました。実業家としての鋭い嗅覚を発揮し、もともとのキャンバスシューズから、比較的人手を要さないダイビング用ブーツの受託製造へと切り替えることで、人手不足の問題を解消しました。翌年(1988年)には、米国オーランドで開催された世界最大のダイビング関連見本市「DEMA SHOW」に出展し、世界の舞台でダイビング用ブーツやマスク、シュノーケル、フィン、ウェットスーツなどの製品を披露しました。これを皮切りに金鴻の2度目の事業転換が始まり、ダイビング製品全般の受託製造メーカーへと転身を果たしたのです。

1997年、金鴻はAropecブランドを立ち上げ、インターネットマーケティングへの投資を開始し、3度目の事業転換に乗り出しました。国際見本市やインターネット上のリソースを積極的に活用し、Aropecは徐々に海外進出への道を切り開いていきました。Aropecという名称は「空」を意味するAROと「支える」を意味するPECからなり、合わせて「天は自ら助くる者を助く」を意味します。特に中東市場では、Aropecの発音が「アラー」とよく似ていること、ブランドが体現する意味と中東諸国が掲げる精神とが合致していることにより、Aropecブランドの受け入れが比較的スムーズに進みました。加えて、ダイビングブランドの多くが温・寒帯地域に位置する欧米や日本のものであるため、亜熱帯に属する台湾ブランドが優位性を発揮できることもまた、成功の重要な要因でした。台湾は中東と気候条件が近いため、Aropec製品は中東のニーズによりよく適合し、現地のウォーターアクティビティ市場で高い販売実績を誇っています。

 

一点一画をおろそかにせず 培った経験を柔軟に活かす

ブランド立ち上げ時に苦労したことは何かという質問に対し、魏総経理は「自社ブランドのマーケティングには、人材・資金・工場の計画、技術と技術上のブレークスルーやイノベーション、市場の発見、制度の構築、代理店間の競争の回避、製品の企画・パッケージなど、さまざまな問題が伴います」と笑顔で語ります。では、そうした困難をどのようにして乗り越えたのでしょうか。魏総経理は、どんどん行動し、どんどん失敗し、どんどん学び、どんどん改めて、細かな点まで疎かにしない精神が何よりも重要だと述べています。魏総経理自身、これまでの経歴や経験を現在の事業に活かしてきました。学生時代から抱き続けているイノベーション精神、兵役で培った忍耐力、そして家族から受け継いだビジネスセンス、これらすべてがAropecに活かされています。世界との結びつきを深め、海外からの受注を拡大するべく、魏総経理は当初、周囲の反対を押し切ってファックスの購入を決めました。まだほとんどの企業がテレックスによる通信で連絡を取っていた時代であったため、ファックスの導入はブランド力の向上につながりました。またインターネットが台頭しトレンドとなっていた2000年の時点で、アリババによる電子商取引プラットフォームへの参入を決断し、三度目の事業転換でも成功を収めました。

 

社会に還元 感染拡大防止に取り組むAropec

Aropecは常に社会的責任を真剣に受け止め、これまで27年にわたり台湾各地の消防署やレスキュー協会にさまざまな救助器具を寄贈してきました。例えば復興(トランスアジア)航空の墜落事故では防寒服を、后豊大橋の橋桁落下事故では救命胴衣を、2009年の八八水害では救命ボートを、南投県神鷹山山岳救助隊には防寒ウェア・水域救助用具一式を寄付しました。

昨年以来、世界の至る所でコロナ禍が深刻化する中、金鴻もまた世界のために微力ながら力を尽くしたいと願ってきました。そこで3層構造の抗菌布マスクを開発するとともに、「台湾政府による医療用防護服製造国家チーム」にも参加し、政府による感染対策に積極的に協力しました。同時に社内でも設備の更新や労働環境の整備を進め、より安心して快適に働ける環境を構築しています。今後も引き続き「社会的企業」として、環境に配慮した保温ウェアを提供していきます。回収されたペットボトルを材料とした再生繊維を用いてウォーターアクティビティ向けの衣料品を作り、社会と海洋のために微力ながら貢献してまいります。

 

魚のように自由自在 Aropecの血と汗の結晶

今年はAropecの2つの製品が台湾エクセレンス賞に輝きました。1つ目は「フリーダイビング用防寒性能ウェットスーツ」です。超弾性素材ネオプレンを採用し、一般的な200%の弾性を上回る350%を実現しました。さらに、長期にわたり磨き上げられた匠の技を惜しみなく発揮し、接着剤とブラインドステッチを採用して浸水を抑え、保温性を高めています。人間工学に基づき施された流線型のカッティングにより、まったく負担を感じさせない「第二の皮膚」が作り出され、ユーザーはまるで「魚」になったかのように、本当の意味で自由自在な「フリー」ダイビングの感動と面白みを体感することができます。胸の「PURSUE」という文字は、フリーダイビングが追求する一つの境地、つまり心と体と魂がリラックスした状態で一つとなり、静寂とバランスを保ちながら、絶えず自己を追求し、かつ超越していく様を表しています。

2つ目の製品は、「スピアフィッシング用迷彩柄ウェットスーツ・アクセサリ」です。Aropecは毎年継続して大型国際見本市に参加し、世界のさまざまな製品のカラーや市場の動向を把握していきました。太平洋、大西洋、インド洋、北極海において、季節、水温、水深など環境条件の変化による海洋の色合いの変化について5年を費やし調査を行った後、さらに2年かけて修正、議論、試験を行い、水中のリアルな色合いを3Dで再現しました。3D立体裁断により完全なフィット性を確保しており、海流の影響による体温低下を低減する設計となっています。胸部には厚さ3㎜の耐衝撃性に優れたEVA樹脂パッドが当てられており、スピアガン使用時の不快感を軽減します。さらに膝とふくらはぎにも耐摩耗性パッドが配され、耐摩耗性と耐衝撃性を高めています。このように、製品の至るところにスピアフィッシングダイバーのニーズにしっかりと寄り添った設計が施されています。

 

イノベーションと立ち向かう勇気 世界の舞台へと羽ばたく

Aropecは一貫して、「イノベーションこそが競争力を高め、未来を切り開く」という企業理念を掲げ、さまざまな見本市に積極的に参加してきました。また、台湾エクセレンス賞が持つマーケティングリソースも、Aropecの市場開拓を力強く後押ししてきました。現在業界のトップに立つ金鴻が、継続的な成長を実現することができた秘訣はなんなのでしょうか。それは製品の独創性、優良性、市場への適合性に加え、多様なマーケティング戦略・活動を展開し、ブランド認知度を高めることにあります。それゆえAropecは今後も台湾エクセレンス賞に参加し、より多くの人に自らの努力の成果を知っていただけるよう発信を続けてまいります。

 

担当者

日本国内の金鴻(Aropec)製品取扱店

東京:

会社名:有限会社エイチアイディ(担当責任者:平野 大樹)

住所:〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-6-1 ホーメックス広尾D号棟

TEL:03-6712-6975

FAX:03-6712-6976

Email: hirano@aqros.jp

Website: www.aqros.jp

沖縄:

有限会社エイチアイディ(担当責任者:中川 昌夫)

住所:〒901-2223 沖縄県宜野湾市大山7-10-27 宜野湾マリン支援センター2F

TEL: 098-942-9242

Fax:098-942-9243

Email: michael@aqros.jp

Website: www.aqros.co.

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